『アレキサンドライト』/山藍紫姫子

アレキサンドライト (角川文庫)

アレキサンドライト (角川文庫)

「BLマスターになるためには、いつか読まなければ!」という義務感から恐る恐る手にした一冊。何度も言うようだけれど、私は耽美が苦手である。BLにおける耽美が、本当に苦手である。私という人間に耽美小説をあてがうことは、さながら月村奎の小説に新田祐克(堂本ミカでも可)の挿絵を組み合わせるがごとき無謀な行為と言ってもいい。

そんなこんなで、義務的読書となることを覚悟のうえ読み始めた本書。だがしかし、読了してみると驚くほどすんなりと本書を楽しめた自分がいる。いったい、何故…!? 思うに私は、BLにおける「ナンチャッテ耽美」が苦手だったのだろう。この『アレキサンドライト』にはナンチャッテ感がないのが良かった。作者は本当にこの道を追求している人なのだろうなぁと感心しながら読み進めた。王道の耽美路線を突っ走りつつも、ラストがしっかりハッピーエンドなところがむしろ良かったし正しかった。

読み終えたあと、自然、山藍氏に興味がわいていろいろ調べてみた。某ネオロマンスゲームで、炎×光のカップリングの同人誌を出しているという情報を得、ものすごい勢いで納得した。むちゃくちゃ出してそう。特に光ってところが。しかもベル●ルクでも同人誌を出していると聞いて、これまたものすごい勢いで納得した。むっちゃくちゃ出してそう。唯一納得できなかったのが●ッチャマン(笑)。●ッチャマン萌えるんですか!?>山藍先生 そんな意外性にも胸キュンな小生なのであった。あとあと、ホームページのほうで某角川小説の映画試写会レポートが掲載されてるんですけど、「その小説のそのキャラクター、私も好き好き好きーーー!」なので共感∞でござった。

ところでこれってボーイズラブなのかなぁ? BLというよりはJune? 女性向け官能小説? よくわからないけれど、とにかく「正しくJune」な作品であることは間違いない。流麗な文体で延々続く意外なほどあからさまな官能シーンに乾杯。長い間、「なぜボーイズラブには強姦から始まる恋が多いのだろう」と疑問に思っていたけれど、本書を読んでその疑問が消化されつつある。愛って暴力なのか。うーん。なるほど。

BL読みとして、新しい可能性を感じさせてくれた一冊。カバーイラストレーションも美しい。しかも本文に挿絵がなく電車で読みやすかった。ルビー文庫で出さなくて正解。というわけで★は5つで。