『green-out』/町田ひらく

ショタ好きのポールさんにちょっと読ましてもらった本。この中に収録されている短編「深海人魚」がショタもの。1996年2月号の「MANGA 純一」に掲載された作品とのことです。
ボーイズラブではありません。ラブはどこにもないからです。強引に名づけるならば「boy's life」、これは「命」のお話だと思います。男同士のセックスや恋愛を描いたもののなかで、こういった切り口は大変珍しいので、新鮮に感じました。やっぱり、男性はそういうことをよく考えるんでしょうか。この短編以外のお話で、男の人が幼女に向かって「孕め!」と罵声を浴びせかけ犯すシーンがあるのだけれど、読みながら、「深海人魚」が命をテーマに描かれた理由を、ぼーっと考えてみたりしました。

話を戻しましょう。
ストーリーは、文芸サークル所属の大学生・唐沢のもとへ、ひとりの不思議な美少年・真砂彦がたずねてくるところからはじまります。『沈黙』というタイトルで深海魚の孤独を書いた唐沢の詩作に、年齢に似つかわしくない共感をしめす真砂彦。トキ絶滅のからくり、絶滅危惧種の深海魚の孤独――観念的な会話が交わされるなか、気がつくと、唐沢の前で真砂彦は生まれたままの姿になっていました。

ボクを抱いてもらいたいんです
何も聞かないで今日だけ
一度だけだから――

唐沢に抱かれている最中、真砂彦はつぶやきます。

感じるよ
新しい何かの生まれるのが――

情事のあと、真砂彦は明かりをつけたままで眠りたい、といいました。「暗闇はイヤだ」と。ひとり体を流した唐沢が部屋へ戻ると、そこには……。





というようなお話です。一部の台詞、記憶で書いているので不適切な箇所があるかも。帰ったら直します。全体的に、非常に情緒溢れるお話で、私は好きでした。命がテーマ、というのは私が勝手に決めたことなので、このお話の真実は、もっと別のところにあるのかもしれません。でも、トビラに書かれた、

SEXすると
病気がうつるぞ
命って名の“病気”がな

を読むと、やはりそう思わずにはいられないのでした。ともあれ、ショタコンといえば、みなみ遥の『Strawberry children』しか知らなかった私には、衝撃的でした。BLでは明治カナ子とかお好きな人は、きっと気に入るのではないかと思います。こういうショタものをもっと読んでみたい。「おっおにぃちゃぁ…んっらめっらめらよおおおおおおっ!!!!!!」みたいなノリじゃなくて、こういうメロウなショタを。「バナナはおしりに入るんですか?」みたいなノリじゃなくて、こういう詩的なショタを。ま、「バナナは〜」みたいなテンション高いノリも嫌いではないんですけどね。

同じ官能系漫画家(という呼称は正しいのか)の山本直樹も、文春発行の『学校』でホモ漫画描いてましたよね。これについては、ボーイズラブ的萌えは皆無です。町田さんのほうが、少年は可愛いし性描写もきつくないし、萌えやすいと思います。ただ、私山本直樹のホモものも結構好きなんですよね。とがしやすたかさんが原作で、結構ミもフタもないホモものなんですけど。こっちもそのうち感想を書こう。