『狂いもえせず』/まんだ林檎

狂ひもえせず (バンブー・コミックス 麗人セレクション)

狂ひもえせず (バンブー・コミックス 麗人セレクション)

すき。愛してる。恋。……ああ、そうじゃない。僕らを駆り立て追いつめるのは、心よりも肉体、邂逅よりも血…そう、本能であり宿命なんだ――。

  • 判定不能です…。たぶん神谷○んこが読んだらふるふるふるって震えると思う…漫画としては優れていると思うけど、恐すぎて判定不能。今まで読んだBLまんがのなかで一番堕ちる作品かも。ペンネームはどう考えてもマンダリンからとってるし、マンダリンてたしか陽気な楽器だったような気がするし、まさかこんなトゥーヘビーな作品だなんて、誰が想像するだろう。はあああああああああ。愛ない。救いない。未来ない。つらい。
  • ええと、全編読みきりで構成されています。
    • 表題作の「狂いもえせず」は双子もので、これがもう「うわああああああああああ(狂)」って感じ。読んでるとおかしくなりそう…。カバーイラストの攻の顔色があまりにも悪いから、心配してたけど…。もうね、攻とか受とかそういう概念が意味ないですよね。あーこわい…。双子ものって恐いですよね。また濡れ場の描写が濃密で、むせかえる空気とか熱い体温とか体液のぬるみとかこう、伝わってくる感じが…恐怖。
    • 「ソラリゼーション」。スプリンターのさわやか美少年が、ケガで走れなくなってしまって、その絶望を美術教師とのハードなセックスで紛らわそうとあがく話。終わり方が…。
    • 「AFTER 16」。これ…!これ…(涙)!!仕事で凡ミスとか繰り返して一日ひたすら上司に謝って、「あー今日はBLでも読んで癒されよう」って思ったときにこれ読まされたら、もう、軽く虐待ですよね(いやまじで)。ふつう、この同窓会系の設定なら
      • 攻「おまえ、学生時代オレのこと好きだったんだろ…?」
      • 受「ずっと…16年間ずっと好きだった…!好きだったよ…!」
      • 攻「オレもおまえのこと、気になってた。教室で視線を感じて振り向くと、いつもおまえはあわてて目をそらしてたよな」
      • 受「だって、攻のこと、好きだったから…」
      • 攻「受…。おまえかわいいな…」
      • 受「攻ぇ…あァ(以下延々喘ぎ的なもの)」

    こんなん想像するじゃないですか。でも全然違うから。シビアすぎだから。

    • 「僕らは快楽に貪欲です。おそらくは愛よりも恋よりも」。アナル開発されたくてされたくてたまんないノンケ男が、ゲイの美少年を誘って愛欲に溺れていく話。これはまだかわいらしいかも…。えげつないけど。
    • 「痴漢電車」にいたっては軽くホラーですよね。笑ゥセールスマン的な…。部屋で読んでて思わず後ろを確認してしまいました。
    • 「ケツメイト」。自殺寸前のメタボ中年を肉奴隷にして、愛溢れる調教生活で生きることへの執着を思い出させ更生させては、また新たな肉奴隷を探す…。そんな孤独なジジ専ご主人様の悲哀を描いた物語。これが一番和んだ。そう、愛があるから!いくらメタボ中年SMプレイ獣○プレイ風味でも、そこに愛があったから…!
  • まんだ先生は妊婦のときにこの単行本の仕上げをなさったそうですが…、尊敬いたします。ボーイズラブの世界は奥が深いですね…。こんなに救いのない作品ばかりなのに、どうしてかこの本を手放す気になれません。また私の手に舞い戻ってくるような気がする。そんな宿命すら感じる恐ろしい一冊でした。おすすめ。