『恋心』/小川いら

恋心 (アクアノベルズ)

恋心 (アクアノベルズ)

大学教授×図書館司書のしっとり大人のラブストーリーです。表紙のイラストを見るからにそんな感じですよね。そんな感じの話なんです。このお話に今先生の挿絵をあてがった人は、相当ハイセンスですね。素晴らしい。とくべつな事件はおきませんが、主役の二人が静かにゆっくりと関係を深めていく様子に、激しくうっとりできるのでおすすめの一冊としてご紹介したいと思います。


大学教授の大崎は、京都の古いお寺で旅行中の美青年・由岐也と出会います。突然の雨に導かれ、人恋しげな受たんをほうっておけず、大崎先生は初対面の彼を抱いてしまうのでした。名前も告げずに去って行った彼を忘れられない大崎先生。そんなとき、赴任先の大学で図書館司書として勤める由岐也たんと偶然再会して…!?
みたいなお話です。たとえばボーイズラブによくあるような、受の元恋人の人格が破綻していて受のア○ルにおかしげなクスリを盛ってトンデモ展開とか、受がめちゃモテBODYでノンケ男を無意識にたぶらかして嫉妬に狂った攻がご乱心とか、そういう派手でわかりやすい展開はありません。しかしながら、それがいいのです。たまにはこんなしっとりBL、いいじゃない。図書館司書とか、いいじゃない。

大崎先生が若干、完璧すぎるきらいはあるのですが、実は彼にも大きな心の傷があって。だからこそ由岐也たんにもあれほど真摯に向き合えるのね、と思うと切ないです。そう、全体を通して、空気が「切ない」んですよね。『ちんつぶ』をマンセーしてるその口で言うか、と突っ込まれそうですが、ボーイズラブの醍醐味は「切なさ」だと思います(いや、『ちんつぶ』も切ないから)。