『肉食獣のテーブルマナー』/草間さかえ

肉食獣のテーブルマナー (ドラコミックス 130)

肉食獣のテーブルマナー (ドラコミックス 130)

短編集。以下、4つのお話を収録。
・キス、シロップ
・肉食獣のテーブルマナー
・ここだけのハナシ
・春の指先

「キス、シロップ」と「肉食獣のテーブルマナー」は双子兄弟を別々に描いた、一応連作。
「キス、シロップ」は兄の亮司、「肉食獣のテーブルマナー」は弟のサトシのお話です。いやー双子のお話って興味深いですよねぇ……。厳密に言うと、私のバヤイ、漫画家などの表現者がどう双子を扱うのかが興味深い。このお話は、双子モノの常套的な作り方がされてます。一卵性双生児で見た目そっくりの彼らですが気質は正反対、っちゅー設定なのです。兄貴の亮司は草間先生の思う「かわいい受」、弟のサトシは兄貴に恋するかなり屈折した攻、というように、方向性の180度違う二人なのです。
私が好きなのは弟のサトシが出てくる「肉食獣のテーブルマナー」。同じゼミの後輩・安藤が、サトシの弟への秘めた恋情を知ってしまうところで二人の関係が展開を見せるのですが、そこで安藤君が同情して泣いちゃうところがかわいくて胸kyun。そこで出てくる台詞がオビにある「お前、俺を慰めようなんて百年早いよ――」なんですけど、この強気な発言にもちょっぴり胸kyun。

ただ、ワタシ、「この攻の弟って、もしかして受なんじゃねーか?」なんて思っちゃったんですよね。でもちがった。兄弟でカップリングを考えた場合、私は大概「弟×兄」派なんだった。だからサトシは攻で間違いなかった。草間先生、属性付けのセンスを一瞬でも疑ってゴメンナサイ。弟っていうポジションがすでに攻だった(でも世間的には「兄×弟」派のほうがメジャーな気はするんですけど)。

続く「ここだけのハナシ」はかわいくていい話です。ゲイの青年が好きになってしまった相手が、実は接触恐怖症からオタクの道に走ってしまった隠れオタクであったという意外性が面白い。といっても、隠れオタクだった物語上の事実より、「草間さかえのタッチで猫ミミ萌え絵が見られるとは!」という驚きが意外性の大半を構成しているような気もします。カバーをはずした本体表紙に続きの漫画が読めるのも嬉しいです。
「春の指先」も好き。濡れ場に入るまで自分の受攻判定が正しいかどうか不安でしたが、ばっちり正しくて個人的に満悦しました。やっぱこっちが受だよね。良かった…。


全体的にナイスな短編集でした。絵がとにかくいいっすよね。あと、タイトルが最高だと思うのです。双子をモチーフにした作品に興味のある方は、是非お手にとってみてくださいな。惜しい点は、双子の登場によって、人物の見分けがつきにくい傾向に拍車がかかっていること。前半、かなり戸惑いました。しかし、コアマガジンでこんなにまともな本を読んだのは久しぶり。良い意味で、コアマガジンらしくない1冊。