『高慢な野獣は花を愛す』/遠野春日

高慢な野獣は花を愛す (キャラ文庫)

高慢な野獣は花を愛す (キャラ文庫)

893風青年実業家×カフェバー兼花屋のオーナー。久々に読んだ「強姦からはじまる恋」モノ。ファーストインプレッション最悪のはずが、相手が時折見せる意外性にあふれた穏やかさや気遣いに触れるうち、段々と自分の気持ちが分からなくなって…。みたいな、BLの典型ともいえる受の心の動きに若干うんざりしたものを感じつつ、それなりに楽しく読みました。強姦以降の3か月、ふらりと攻が現れては抱かれ続けていた日々だったらしいですが、いちど受たんがひどい風邪を引いてしまったときには、攻は甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたそうです。「体目的じゃなくてもやさしくしてくれるなんて受たんカンゲキ」って感じだったんでしょーけど、その大事なエピソードが回想ですまされているのが納得いきまへん。

ではこの本のどのあたりが楽しいかというと、ふとした言葉使いに感じる、遠野先生の文章のてらいのなさです。比較的かたい感じの文体だと思いますが、思い出したように入る普通すぎる語彙に、妙に癒されます。この本でいうと、「ふかふかのソファ」とか。最初は違和感ありまくりだったのですが、段々クセになってきました。気負いのない文体ばんざい。

イラストもけっこう良かったです。