『おひっこし?』/山田ユギ

おひっこし? (ジェッツコミックス)

おひっこし? (ジェッツコミックス)

山田ユギの描く男性キャラが女子にトキめいてる様なんて見たくない!全然見たくない!!けど読んだ。読んでしまった。だって好きなんだもん…。大好きなんだもん!
というわけで、とうとう『おひっこし?』発売と相成ったわけですが、皆様の感想はいかがですか?面白かったですか?トキめきましたか?やっぱりユギたん先生サイコー!ってベランダから君が好きだと叫びたい感じでしたか?

突然ですが、私、初めて山田ユギを読んだとき、「この人の漫画はとにかく好感が持てる。この好感持て具合は、BLというジャンルを超えた普遍性がある」と思いました。つまり、やおいっ娘以外にも受け入れらるであろう、キラリと光る「何か」があると感じた。BL界独特の「現実にはそんな男いねーっよっ、ハズカシーッ!(けど萌えっ)」ってなノリがなくて、すごく「普通」の感覚があるなと感じました。以前何かの感想でも書きましたが、山田ユギの受キャラなら、柿ピーを食いながら鼻から牛乳を飲んで裸踊りしても許されそうな気がするじゃないですか。その時点で全然「普通」じゃなくなるわけですけど、そういうBLらしからぬおキレイな枠にとどまらないキャラ造形とか、別冊マーガレットにも馴染みそうな荒いけど野暮ったくない描線とか、そういうものが「普通」を描ける山田ユギ独特のスケール感だと思ってました。普段やおいを読みつけない人にBLの名作を紹介するなら、その中に最低1冊は山田ユギをセレクトするでしょう。普段BL好きをひた隠しにしている私が、むしろBL界の宝として山田ユギ好きをアッピールしていきたい。私にとって、山田ユギさんという方は、そういう漫画家さんでした。

今回、一般誌に連載された『おひっこし?』が1冊のコミックスとしてまとまって、初めてまともに読んだわけですけれども、私にとっては非常に複雑な味わいを持った1冊でした。こんなに山田ユギの普遍性に期待をかけていた私が、こんなに微妙な気持ちになるとは!そのことがむしろショックでした。でもやっぱ、なんつーかこう、ムズムズするんですよね。何オンナノコ相手に赤くなってんの!?ちがうでしょちがうでしょ!あなたの「本当」はちがうでしょーーーー!という気分になって超フラストレーションがたまるのです。
でも、漫画としてやっぱり面白い部分とかもあるわけで、でも気が付くとかわいい女性キャラに対して「ああ、コイツが男だったら何億倍楽しいだろう…」なんて考えてしまう私って、なんて作品に対して失礼なオンナなんじゃろう…。ガーン。全然、「正しい読み方」ができないわけです。はぁ…。



絵柄の変遷も非常に興味深い1冊でした。ボスの顔つきの変わり方を見ると、わかりやすいような気がします。マガビーの新作はどうなのかな〜。ユギ先生、以前の「ぱふ」のインタビューで、自らのことを「今は萌えなしっ子」と仰っていましたが、また私生活でも萌えを取り戻していただいて、誌面に萌えを炸裂させてほしいものであります。個人的に山田ユギ先生におすすめなのが某AIBOー。オヤジ受だし。単純×小難しいだし。先生たしか芸能もイケるし。というわけでAIBOーを個人的におすすめしたいです。もうジャンル的に下火だけど。攻、結婚したし。


タイトルにあるクエスチョンマークが、先生自身の迷いを表しているように思えて仕方が無いけれど、ただ単に「やおい界の宝を一般紙にもっていかれてたまるか」、と思う私のひねくれた精神がそう感じさせるだけなのかもしれない。