『遥山の恋』/六青みつみ

遙山の恋 (リンクスロマンス)

遙山の恋 (リンクスロマンス)

ファンタジー分野のBLでは、今まで読んだ中で一番の名作だと思った。デビュー作だそうだけど、非常にノリにノっている雰囲気が伝わってくるといいますか、小説を書く喜びが行間からにじみ出てる感じがします。この人、BL作家になるために生まれてきたのでしょうね。天職です、きっと。先日読んだ『リスペクト・キス』でも思ったけど、非常に確信を持って文章を書いている感じがします。珍しいです、こういうかた。たとえていうならそう、新田祐克アニキのような安定感(違うか)。そこが素晴らしい。あと、語彙が豊富で構成が確か。基礎体力が高いと思います。
加えて、萌えに対する理解度も相当高いところが信頼できます。というより、私が「は〜こういうシチュエーションってもえ〜」と思うようなシチュエーションを書くのがすごく上手いのです。私、未だ結ばれていない受と攻が、お互いを意識し合うがゆえに絶妙にスレ違って、なおかつ気まずーーーーーーい想いをするシチュエーションが素晴らしく大好きなんですよね。気まずければ気まずいほど萌え。指先がしびれるほど萌えます。というわけで、この本の中でも、攻が受に対して無神経な発言を繰り返してさんざん受を傷つけて、二人が気まずーーーい思いをしている場面がたまんなかったっす。素晴らしい。

ラスト、少々エピソードを詰め込みすぎな感があったかも。この作者さん、山を降りてからの受たんに新たな悩みをつくっていましたが、それは次の巻でやるべきことなのではないかしら、と思いました。うーん。でも面白かった。