『いつか雨が降るように』/国枝彩香

いつか雨が降るように (バンブーコミックス 麗人セレクション)

いつか雨が降るように (バンブーコミックス 麗人セレクション)

表題作はさておき、同時収録の読みきり、『秘密と嘘』が気になる一冊。このトビラ、超麗人ぽい。このトビラ絵、凄まじく麗人っぽい。私の中の「麗人のイメージ」を具現化すると、まさしくコレになるかも。このお話は微妙に国枝作品の中では異色だなぁ、どうしてだろうなぁと思っていたけれど、しばらく考えてわかった。攻がかっこいいからいつもと違うんだ。

私の中で、国枝さんの評価は超高いです。絵はこなれていて安定感があるし、話作りも巧いし、ほのぼのもいければシリアスもいける。バランスがいいんですね。BLの中では相当レヴェル高い方と思う。でも、哀しいかな、この方は攻の好みがマイナーなのです(いや、受の好みもか?)。まぁ、受は、たまに女顔のキャラにヒゲとか描いちゃうのはアレだけど(笑)、かろうじて綺麗目に描いてくださるからよしとする。でも、攻が!攻が決定的に格好よくない!!!BLでは格好よくない攻って、かなりどーしようもない。ほとんど存在を許されないレヴェル。
たとえば最近流行りの「不細工」ですが、あれって、普通は受を不細工にするものだと思うんですよね。敢えて受を不細工にする逆転の発想だと思うんですよ。「不細工でも寵愛を受ける、そこに萌え」みたいな。でもb-boyフェニックスの不細工特集で、国枝さんは攻をとことんまで不細工に描いた。そこに国枝彩香のBL作家としての個性と、ブレイクしきらない原因を見た思い。もとがBL土壌の人ではないから、いわゆる「萌え」に対して他のBL作家と認識が違うのかもしれない。

まぁ、国枝さんの攻の好みに関しては、本作のあとがきを読むと、「ああーーー(なるほどね)」と納得いくはずです。「格好よくないはずだよね」、と(笑)。私、国枝さんの攻なら格好よくなくてもOKです。ヘタレでも。話が面白いから、OK。だけどやっぱ『秘密と嘘』みたいな攻を見ちゃうと、男前描いてくでーと思ってしまう。またこの攻の最低ぶりがいいではないですか。情事の後、受と絡みあったまんま、信じられないような態勢で煙草を吸うシーンがあるんですが、このシーンのインパクトがスゴイ。インパクトがあるのは多分、画力があるから。全体的に重過ぎる話ではありますが、結構好きです。
表題作含め、胃に重たいものが溜まる雰囲気の話が揃っていますが、個人的にはおすすめしたい一冊です。