『百日の薔薇』/稲荷家房之介

百日の薔薇    アクアコミックス

百日の薔薇 アクアコミックス

『ぱふ』で特集が組まれていますね。これはナイスBLだった! 今月のナイスBL大賞は『百日の薔薇』に決定です。これから読まれるかたは、濡れ場の表現に特に注目して読んでいただきたい。とってもエロいの。攻の視点に比重を置いているのがいいと思うんですよね。受と攻の表情がね、ちゃんと葛藤が伝わってくるように描かれているんです。顔だけじゃなくて、ちょっとしたしぐさにもそれが感じられるのです。やっぱりBLのポイントって「葛藤」だな、と改めて思った。葛藤がこの濃密な空気を作っている。哀しみから愛に行き着くまでに出会う、いろーんな色の感情が一緒くたに交じり合って、ひとつに溶け再びにおい立ってくるような、そんなエロスです(意味不明)。これは女性が好むエロスの基本形だと思います。男性向けにはこういうのはないですよね。ところで、男性向けの性描写に「挿入の断面図を描く」というものがありますが、これはBLには未だに取り入れられていないですよね。あのエロさって女性の私にはよくわからない。今後もあれはBL業界では流行らないと思う(というか思いたい)。女性の好むエロスって何だろう、と思っている人は、この稲荷家さんの濡れ場を読んでみるといいのではないでしょうか。「攻視点でみる受のうなじ」に女性は興奮するんですよ。なんでなんだろうね、まったく。
私がこの漫画で一番すてきだと思ったのは、濡れ場で攻が何かしかけようとするたび、受がはっとショックを受けたような表情をするところ。こ・れ・が!なんかいいのです。今さら、いちいち、そんなショックを受けてしまうんだ、っていうのが切ないようなもどかしいような、こう……なんつーんですかね、この気持ち。これが萌えってやつですかァ?

ただ、稲荷家さんの同人の現ジャンルが透けて見えてしまったので、その点で泣く泣く★1コマイナス(でもおかしいなァ、稲荷家さんはこのCPではないはずなのだが…)。濡れ場とキャラは★5つ、ストーリーは★3つです。この攻、超かっこいい。主従関係だけど、これは年下攻じゃないんだね。このお話はまだ続くんですよね? 微妙に伏線が処理されていない箇所があったかと思うのですけど、それが気になっています。あと、稲荷家さんがこの漫画作品と同タイトルの同人誌を発行したことがある、という事実が大変気になっています。
余談ですが、このかたのサイトにある某怪盗漫画パロのイラストが素晴らしいのです。攻がね、超かっこいいんですよー。多分、稲荷家さんは受好きだと思うんだけど、受好きであるが故にあんなに攻をかっこいく描けるのかもしれない。「かっこよくない男にあの子は渡さないんだから!」的な。受好きの人と交流すると、そういう思想を感じることがある。