『抱きしめてくれるなら』/野火ノビタ

抱きしめてくれるなら (スーパービーボーイコミックス)

抱きしめてくれるなら (スーパービーボーイコミックス)

どーしようもない気持ちにさせてくれるBL。
自分を捨てた男の面影を否定する母親のせいで、主人公・みさきは幼少期から男性としての性を否定されて育ちます。愛情らしいものを知らずに育つみさき。内気で大人しい彼は、ひょんなことから知り合った不良(死語)男にいいように抱かれてしまいます。ただの肉の接触を、いっとき心と心がふれあったかのように感じ、これまで味わったことのない安らぎを得るみさき。けれど、男がみさきに対して愛情を持っているはずもなく、それを知ったみさきは絶望します。やがて彼は夜の街に一人佇むようになる。抱きしめてくれるかいなを求めて……ってな感じのBLです。まー、あとはお決まりの転落人生が待ち受けているわけなのですが、わたし、こういう話はだめだ。アカン。この間、町田ひらくの漫画を読んだときも思ったけれど、「男」という存在に対する絶対的な諦念や絶望を、こーいう乾いた筆致で描かれると、呼吸が苦しくなってくる。水分がほしくて喘ぐんだけど、展開に救いがないから、自分で涙を流して無理やり湿らせていくしかない。読み手にも力技が必要になるから疲れる。そんな感じのBL。
ツブれた出版社(ひかり出版って聞いたことない)で連載していた作品をビブロスに持ち込んで単行本化してもらったらしいです。へーーー。

うーん。榎本ナリコ名義の『センチメントの季節』よりは好きですね。主人公はおどおどした内気な少年で、常に泣きそうな、困ったような表情を浮かべているんだけれど、ちょっと男の人に優しくされただけで、ぱっと嬉しそうな表情を浮かべてしまう。その素直さが痛い。なんかやるせない。それがすごく上手く描けていると思う。