『好きで好きで好きで』/高遠琉加

好きで好きで好きで (ビーボーイノベルズ)

好きで好きで好きで (ビーボーイノベルズ)

断言しよう。世の中に、受の片恋ほどやおいっ娘を切なくさせるものはない。

最終的にハッピーエンドにならねえハズはねェんだ、と分かっちゃいるけどつい切なくなってしまう(やおい)女心。表題作「好きで好きで好きで」は受視点からヒジョーに救いのない片想い話が綴られており、その後に収録された「ラブソングみたいに」は攻視点で「好きで〜」と同じ時間、シーンをなぞる形になっています。で、最終的に攻が受への恋心を自覚して二人は結ばれるんだけど、いやーーーーー切なかった。なんか受の片想いってどうしようもないもの。攻ならさ、BLの典型として「オレはお前が好きなんだー!」って襲ってしまうこともできるわけだけど(人としてはやっちゃいかんがBL界では多分アリということになっている)、受はどうしようもないんだもん……(私は襲い受・誘い受のタイプは嫌いだ)。好きだったシーンは、二人が舞台を観に行って、途中で寝てしまった攻が受によりかかってくるところ。切ない。あと、受が攻に平手打ちをお見舞いするシーン。私、BLにおける「平手打ち」が妙に好きなんですよね(笑)。多分世の中で一番「BLの平手打ちが好き」な女かも。
佐々さんの繊細な挿絵もよかったです。ただ、短髪の攻に関しては、前髪を上げてほしいけれど。

全体的に受と攻の心情が丁寧に描かれておりよい作品なのですが、ちょっと納得いかないところも。まず、私は二人が結ばれてからの受視点のお話が読みたかった! だってこの受、最後まで愛されてる自覚がもてないでいるんだもん。そんなの切ない。だから、受視点本編→攻視点本編→受視点超短編、という構成にしてくれたらよかったと思う。結ばれたあと、この受がどんな気持ちでいるのか知りたかった。あと、最後の病院で体を重ねるシーンですが、あれが若干性急すぎ。二人の出逢いは高校時代、5年以上前まで遡るんだから、大事な場面の展開でここまで急ぎすぎてしまうとアンバランスな印象がある。というわけで私は、病院では告白&キスまでにとどめておいて、退院後、受が攻の自宅にお花を活けに来たタイミングで落ち着いて結ばれてほしかったです。
あと、攻が恋人と別れ話をするシーンでは、「オレもお前と付き合っていながら男と寝たよ」的一言がほしかった。あの恋人にはそれを知る権利があったと思う。


色々言ってしまいましたが、結構好きなお話でした。たまにはこういうお話を読むのもいいもんです。高遠さんってなんとなくするする〜っと筆を進めていそうな、さらさらの文体ですね。と思ったらこの作品は結構難産だったらしい。へー意外。