『この罪深き夜に』/和泉桂

この罪深き夜に (リンクスロマンス)

この罪深き夜に (リンクスロマンス)

自分内円陣てんてーブームに乗っかって購入してみた一冊。和泉先生の文章は読みやすくて割合好きです。しかーし、内容がとにかくお耽美じゃった。和泉センセは普通のリーマンものを描いていてもどことなくお耽美ムードが漂うのに、この作品は時代モノでおまけに身分違いの恋ですからねぇ。お耽美度MAXでした。なんか私、耽美はダメなんだよな〜。何でだろ〜。萌えにくい。ちょっとナルシスティックなムードがあるからかな?でも、和泉先生の文章と円陣先生の挿絵はなかなか相性がよろしくて、その点は良かったな。あと、全体的によく調べて書かれている感じがして、非常に好感がもてました。

最近、目的のために手段を選ばない受が出てくる話をよく読む気がします*1。よく読むというか、英田先生の『エス』とこの作品のことなんですけれど。手段を選ばないとはいえ、取引で男に身体を捧げる受ってどうなんでしょうか!?なんか私、あんまりこういう話好きじゃないみたいだなぁ。いや、「手段を選ばない受」については、それはそれでいいんですよ。無鉄砲な受って割と好きだし。でも、取引の条件が肉体関係って、それってどうなのよ?と思ってしまう〜。なぜだ〜。人としてあまりにあんまりだからかな?普通そんな状況、ないですからね。おまけに同性愛者じゃない男が男の身体を要求する……というのは、あまりに現実的じゃないような気がして……。まぁボーイズラブなんてファンタジーですから、そういうリアリティーを求めても仕方ないのはわかっているんですけどね。ただ単に、私自身がそういうシチュエーションのボーイズラブ作品を好まないだけなんだと思います。和泉先生のこの作品も英田先生の『エス』も、どちらも文章が整ったまともな作品だけに、「ラブ」の部分で現実離れした展開をされると、妙に気になってしまうのかもしれません。40歳過ぎの子持ちの男が男を連れ込んで自宅で淫行三昧、というのもなぁ……。40過ぎても、自分の息子にぎょっとされるほど美しい男なんて、ありえるのだろうか??女性でも難しい気がするんですけど〜〜〜。「ありえるかありえないか」が重要なのではなく、結局「自分が萌えるか萌えないか」の問題だとは思うんですけどね。

あとこの作品に関しては、受が攻に惹かれた理由、攻が受に惹かれた理由、どちらも弱いような気がします。少なくとも、受は攻に再会した時点で、自分の恋心を自覚しておくべきだったのではないでしょうか?攻の自宅に女性が訪れているところを目撃してショックを受けるシーンがありましたが、「まだ自覚してなかったんかい!?」とかなり驚いてしまいました。上海逃亡後のお話は攻視点で描いてほしかったかもな〜。そうしたら、攻が受にこれほど深く惚れた理由も、もう少し納得できたかも。受は受で、深窓の令嬢よろしく、不要な絵葉書何枚も買っちゃうし。お金がもったいないよ!!(←びんぼうしょう)。
「命をかけてお前を愛す」って感じのギリギリ・ラブを描いた作品なもんだから、惚れあった理由に納得がいかないと辛い。下克上はいいんですけどね〜〜〜。ていうかむしろ大好物なんですけどね〜〜〜。耽美は難しいなぁ〜〜〜。というわけで★2.6を四捨五入して、★3つで。

*1:「情熱」シリーズにもこんな場面ありましたね。結局脇キャラが力になって、とめてくれましたけど。とめてくれてよかった……。