『エス 咬痕』/英田サキ

エス 咬痕 (SHYノベルス 133)

エス 咬痕 (SHYノベルス 133)

あれ?このカバーに描かれている受たんってもしかして小鳥遊くんなの?いや、椎葉だよね。上が永倉で、裏表紙に描かれてるのが宗近だよね???それでいいんだよな。とりあえずそういうことにしておこ。というわけでエスシリーズ2作目でございます。ふつーに面白かった。今回は受たんがふらふら揺れてましたね。1作目で私が足りないと思ったものが盛り込まれてきている感じで、よかったです。

だがしかし。椎葉たんの思考に何だかちょっとよくわからないところがある。たとえば小鳥遊くんに対して「俺のところへこい」というところは、キャラクター的に何だか行き過ぎた申し出のような気がする。自分のエスを死なせてしまった罪悪感からとか、いろいろ理由はあるんだろうけれど。それとも、刑事としての責任感?結局、自分のところじゃなくて宗近の家に預けるしさぁ。この一連の行動はイマイチ合理的じゃない感じがするな。椎葉たんは設定の割りに「人間らしい」ところを見せすぎているような気がするぜ。ここまで情に流されるたちならば少なくとも「贈り物をしたことがない」人生なんて歩んでいないように思うのだがいかがだろう。1作目で、林と接触したときもあっさり贈り物を受け取って盗聴されちゃうし、ボーイズラブの定番でお酒に変なもの混ぜられて犯されかけちゃうし、案外うっかりさんなんだよね〜〜〜。結構ボーイズラブ定番のうっかりをおかしているよね。ううーん。あと椎葉たんって小説では男らしくてきりりと描かれている割に、挿絵はいつもほーーーっとした感じで、超儚げに描かれているのが気になる。超・受然とした雰囲気に描かれているので。たまにはかっくいい椎葉たんも描いてほしいです!ふだんはかっくいいんだよね?宗近に「お嬢ちゃん」なんてよばれちゃってますが、ふだんはキビキビとお仕事がんばってるんだよね?そう思いたい。というわけで今後はかっくいい椎葉たんのイラストに期待。
永倉のエピソードは良かったです。椎葉たんと気持ちがシンクロして一線をこえかけるシーンがありましたが、受の浮気嫌いな私もこのシーンにはなぜか燃えました。別にボーイズラブ読みとしてではなく、ふつうの小説を読んでかーっと胸が熱くなるときのような、そんな気持ちで燃えました。なんでだろ?たぶん本命の攻様である宗近よりも、永倉の心情のほうがリアルに感じられたからだと思います。あのシーンは、永倉の辛抱たまらん気持ちが切実に伝わってきて良かったな。宗近は未だにつかめません。多分この続きで彼の過去が明らかになっていって、椎葉に対する想いとかそのへんもろもろ明らかになってくるのでしょう。


突然ですが、私はホモ小説でもホモ漫画でも、「ボーイズラブ」と呼ばれるジャンルのものを読むときは、基本的に描かれているカップリングを応援しながら読んでいます。「受たんがんばれ」〜とか「攻そこだ〜いってしまえ〜」とか、なんかよくわかんないけど、「は〜〜〜あなたたち、幸せになってね〜〜〜」と勝手に心の中で応援しながら読んでいるのです(だからバッドエンドで終わられると、ものすごい悲しい気持ちになる)。だがしかし、この小説を読むときは特にこのカップリングを応援する気持ちにならないのが不思議です。淡々と読める。それが不思議。宗近×椎葉、カップリングとしてものすごく正しいのに。設定もかなりツボなのに。今回はむしろ永倉を応援したくなったなぁ。ボーイズラブとしては萌えにくいが、文章が巧くて好きなのでやっぱり★は4つで。はー。このシリーズに萌えない原因をなんとしてもはっきりさせておきたいなぁ。