『エス』/英田サキ

エス (SHYノベルス)

エス (SHYノベルス)

ほ、骨太じゃ〜〜〜。まこと骨太な話じゃ。ポールさんじゃないが、骨太でござったとしか言いようがないですなぁ。面白かったので一気に読んでしまいました。文章も巧いし、よく調べて書かれているし……いまだかつてボーイズラブ作品では味わったことのないような、心地よい緊張感を保ちながら読了することができました。カップリングも超正しいですね。受たんのフルネームが某アイドルグループのひとりと一文字違いで若干気になりましたが、別にこの作者さんは狙ってやってるわけではないと思うので、まぁ、それはそれでよしです。挿絵の奈良先生もグッジョブですね〜〜〜。この方のカバーイラストはインパクトありますよね。色使いのせいかしら。雰囲気がありますよね。ちょっと攻の目が爬虫類系過ぎるような気もしないではないのですが、タッチが作品に合ってていいっすね。特に体の描き方がいいと思う。バスローブからのぞく攻の足がベリッシモ良かったです!攻の足が!巧いな〜、と思いました。英田先生の文章との相性も良いのではないでしょか。

英田先生は、木原音瀬先生と同じ、イクスクラメーションマークを使わずに「っ」を使う方ですね。「お前、大丈夫かっ?」みたいな感じ。この表現だと、なんとなく台詞が平板っちゅーか、棒読み風な感じになるなぁと思うのですが、いかがでしょ。わざとそうしているのかなぁ。わからないんですが。

全体的にとてもよい小説なのですが、なんか色気が足りない気がするのは気のせいでしょうか。カップリング間に漂う色気、というのかなぁ。ボーイズラブ命のこのアテクシが、男同士がくんずほぐれつしている世界を三度の飯より愛するこのアテクシが、濡れ場にさしかかってもさほどワクワクしなかったのはそのせいのような気がする。なんでだろー。攻が「マグナム」とか「おやつ」とか言うからかなぁ。台詞がブツ切れだからかなぁ。なんていうか、ボーイズラブ的な「揺らぎ」が足りない気がするのですよ。受が職業柄、超毅然としているからかなぁ? もうちょっとこう、どうしようもなくなっちゃうような葛藤がほしいんですよね。文章が硬質できちんとしているだけに、そーいうな揺らぎがプラスされれば最強だと思うんだけどなぁ。まだ宗近と椎葉の間に、必然性が見出せないワタクシです。今後二人の関係性はどんどん変わっていくんでしょうか……いや、変わっていくんでしょうねぇ、きっと……。うーーーーん。
いや、でも本当にクオリティーの高い良い作品だと思うんですよ。「こりゃ人気出るはずだ〜!」と思ったもん。要所要所、濡れ場もきちんとおさえてありますしね。正直、本書を読み始めた時点では、ここまできっちりと濡れ場を挿入してくるとは思いませんでした。とりあえず続刊を読まないことにはどーにも結論が出なそうなので、続きも気張って読みます。