『恋愛証明書』/崎谷はるひ

恋愛証明書 (幻冬舎ルチル文庫)

恋愛証明書 (幻冬舎ルチル文庫)

「ザッツ・崎谷はるひ」な一冊。

受たんが攻の弱みに切なくつけこんで身体の関係を結ぶ→受たんますます攻に惚れる→身体だけの関係を続けるのが辛くなる→受:「これ以上あのひと(攻)の負担になりたくない…!こんな身体だけの爛れた関係なんて、もう今日で終りにしよう…」と勝手に終止符を打とうとする→攻:「ナヌー!言葉にせずとも想いは伝わっているじゃろう!オレたちはとっくに付き合ってるはずだぁ!」と説得する→見事にすれ違う→初めてじっくり話し合う→和解する→例のものをえんえん20〜30ページ

というゴールデンフローが健在。あとがきの崎谷先生の「えんえん裸族」というコメントに笑った。裸族って……!面白い。うーん、これなんか見たことあるな〜っていうエピソードや表現が散見されて今ひとつ新鮮味にかける一冊ではあったのですが、はるひてんてー初心者の方には最適な一冊かもしれません。はるひてんてーの得意な素材のオンパレードです。
はるひてんてーは恋愛関係の描写が丁寧なほかにも、いつもお仕事関係も膨らませてお話作りをされていると思うのですが、この話に関しては、攻がバツイチ・子持ちということで仕事より家庭関係の描写が多かったです。私が仕事関係に重点をおいたBLが好きなためか、何となく物足りない印象がありました。基本的に二次元世界の子どもがあんまり好きじゃないことも物足りなさの原因かもしれません。ただ、この話に出てくる准くんはでしゃばりすぎることがなくなかなか良かったです。関係ないけど、この子は将来ものすごい攻になりそう……。パパ(春海さん)受・ママ(遼一)受、子ども総攻め、みたいな。そんな展開を期待したいですね。とりあえずパパ受。はるひてんてーの攻って不器用で、ちょっと受っぽいんだもん。特にこのお話に出てくる春海さんは不器用ぶりが炸裂で、受度が高かったです。受の遼一たんですが、まず名前が男らしいのがいいですね。池上遼一みた〜い。かっこいい〜。攻と結構歳が離れているにも関わらず敬語がくずれるのが早かったのが気になりますが、まぁこれはこれで良いのだろう(私、敬語受好きなの…)。

挿絵は街子マドカ先生。初めてお名前拝見した方なのですが、高橋悠さん系ののびやかな線のイラストを描かれる方です。ただ、受たんの瞳をすごく三白眼に描かれるため、全体的にイラストに甘さが足りない気がしました。なので、はるひてんてーとの相性はそこまで良好とは言えない気がします。悪くはないんだけど…。私がはるひてんてーの受にの髪型に対して「センターわけ」というイメージがまったくなかったから、違和感を覚えただけかもしれませんが。

全体の構成としては、ふたりがくっつくまでを受視点で描き、書き下ろしのふたりがくっついてからの続編を攻視点で描いている感じです。続編の攻の辛抱たまらんっぷりが面白かった。辛抱たまらん攻最高。もちろん辛抱たまらん攻が暴走してハァハァする展開もよいんだけど、はるひてんてーにはこのあたりで、「肉体関係への依存」から離れたお話も描いてみていただきたいなーと思います。編集サイドの意向もあるかとは思うのですが、この方は基本的に「人間が優しいお話」を描かれる方だと思うので、なんかそーゆー持ち味を活かして優しい色合いの作品が読みたいなァ、と。そんな風に思いました。どこかの書評サイトで昔はそういう作風だった、という評価を読んだ気がするのですが、記憶が定かではありません…。