『クリスタル・クラウン』上・下巻/久能千明

下巻のカバー絵が素晴らしいのに、書影が出ない……許せない……はまぞうくんのばか……。
上巻の終わりから下巻のなかばあたりまでの展開が、マジで超ベストクオリティーだった。沖先生の挿絵含め、素晴らしいにもほどがあった。なんていうか、とにかく良かった。それしか言えない。

三四郎アーイシャが「カイ」について話をしているところ、逆にカイとアーイシャが「三四郎」について話をしているシーンが特にお気に入り。受攻のどちらかが第三者とパートナーについての会話をする、というシチュエーションに私は弱いらしい。この小説はそのシチュエーションが頻繁に出てくるが楽しい。

三四郎に拒絶されたあと、任務をこなすのにどうしても二人っきりになっちゃって、どうしていいかわからなくなってうろたえてるんだけどそれを気取らせまいと必死になりつつも全然隠せてないカイが良かった。そのときの二人の会話がとても好き。久能先生の受は、普段激しい分、勢いを失ってしまうときは本当に急速にしおしおとくずおれるからなぁ。相手の嗜虐性を煽る原因はこのあたりにあるのじゃないか? 読んでいる私ですらちょっと苛めたい気持ちになる。それにしてもカイは勤務中も三四郎のことばかり考えている。

そのあと、カイのことを避け続けていたはずの三四郎が、通路でカイを引っ張りこんで強引にキスをするシーンの沖先生の挿絵がとにかく素晴らしかったです。こーいう接触があると、「もー濡れ場はいらない!」とすら思う。あ、でも久能先生の小説は、濡れ場の分量が適度だと思うんですよ。私、小説ならこれくらいがちょうどいいな。頻度も分量も、これくらいが適度。な気がする。受も攻も喋り過ぎないし(受・攻、どちらが喋りすぎるのも苦手)、表現も直接的ではないけれど感覚的にもなりすぎず、非常にいい。