『小さなガラスの空』/山田ユギ

小さなガラスの空 (花音コミックス)

小さなガラスの空 (花音コミックス)

感想を書こうと思って春抱き11巻を読み返していたのですが、読めば読むほど岩城さんと香藤のパッショネイトなやりとりにこちらの脳みそまで沸騰させられて、とても冷静に感想なんて書ける精神状態になれず「おいおいポール、大の大人が何やってんだよ、みっともないぜ。まあこれでも読んで落ち着けよ」と自分で自分にこの漫画を渡したところ自爆しました。せ・切ない……。あんまりにもやりきれない気持ちになってしまったので、この漫画の感想を書こうと思いますよ……。
短編集です。色んなところ(主に小説JUNE)から拾ってきた作品をぶちこんでいるので、ご本人があとがきでおっしゃっている通りへんてこなコミックスになっていますが、どれもユギたん節が利いていて面白い。面白いんだけど、最後に収録されている表題作の「小さなガラスの空」がね、高校生のお話なのですがこれがもう激イタくてねえ……。イタくて読みたくない。でも読んじゃう。切ない。苦しい。後悔。読みたくない。でもしばらくすると読んじゃう。苦しい。辛い。後悔。でもしばらくすると……これをもう何度繰り返してきたことか。
この作品を読むのがなぜ辛いのかというと、何度読んでも泣けないからである。苦しくて切なくてやりきれなくてすごく泣きたい気分になるんだけど、喉元に鉛みたいなものがせり上がってくるだけで、まったく泣けない。泣かせてくれない。
本でも映画でも韓流ドラマでも「泣ける」ことを売りにした作品が多いのはきっと「泣く」ことが快感だからだろう。私もストレスが溜まると泣ける本やらDVDやらをゴソゴソ取り出してきて、思いっきり泣いてスッキリすることがたまにある。
けれどもこの作品は泣くことを許してくれない。このやり場のない思いを吐き出す場所を与えてくれない。なぜなら主人公の直樹がそういう生き方をしているから。直樹が泣けないのに私が泣いてどーする。だから泣かない。泣きたいけど。苦しい。……でも読んじゃう。
でもさー、この作品は「おまけ」がなければここまで苦しくなかったと思うんだよ。この「おまけ」が!「おまけ」め!都合よくおまけのみ脳内から削除しようにも、直樹ってば色んな作品でちょいちょい出てくるからそれもできない。ちくしょうめ!装丁も綺麗なんですよね。ユギたんのコミックスで一番好きかもしれん。青と白のコントラストが綺麗でね。裏表紙の絵がまた切なくてね……。はあ。
たった32ページで私を切なさの無間地獄に突き落とすことができるこの作品にワタクシ五つ星を進呈しとうございます。他の作品は普通に面白いんだよー。特に落語のやつが好き。たぶんユギたん先生も好きなんだと思う。続編を同人誌で出した上に、更に続編を麗人で描いてるから。