『OVER REACH・BOY』/蓮川愛

Over reach・boy (ビーボーイコミックス)

Over reach・boy (ビーボーイコミックス)

表題作の「OVER REACH・BOY」最高! なんて正しい年下攻なんだろう。攻、まだ中学生なのに。受と10歳近く年が離れているのに、この正しい年下攻っぷりはなにごと?! 攻の男の子が自分の立場をすごくわきまえていて、分別ある行動をとっているのがすごくよかった。しかも将来、絶対いい攻になる予感がするし。天才的なヒラメキ感じたし。
表題作のほかには「スロウ・アンド・ファスト」もいいですね。学園ものですが、抵抗なく読めました。終わり方がいいなァ。そのあとに入ってる「恋の理由」もいいですねぇ。このテの話、超好感持てるんですけど。職業の設定も正しいし。これも終わり方がいいんだよなァ。
蓮川さんの読みきりは、行き着くところまで行かないところがいいですね。「恋のヨカン――?」で終わるくらいがちょうどいいんですよ、今の私には。あと「ソコにマーガレットの花を散らすか!」みたいな、一昔前過ぎる少女漫画的手法の数々がたまらないですね。作品全体の雰囲気やテーマ、タッチがとにかく健全な少女漫画っぽい。挿絵で見かける蓮川さんのカラーイラストは艶やかかつアダルティーなので、なんだか誤解していたのですが、蓮川さんはおそらく、非常に素直かつ伸びやかな感性をもったやおいっ娘です。この間久能さんの小説のあとがきコメントを読んで私がなんとなく思ったことは正しかった……。「幼馴染、おいしいですよねvv」はやおいっ娘にしかできないコメントだ。

エロのない作品でつくづく好感が持てた。96年の作品とか入っちゃってるからね。今のビブ様ならこうはいかない気がする……。それにしても蓮川さん、どんだけ挿絵描いてるんだろう。挿絵もいいけど、漫画もいいですね。意外でした。おおや和美的な、「原作つきの漫画描けば売れるだろうにね」系の方だと思ってたんですけど、なんかこの方の漫画は妙に癒されますわ。カップリングが正しいし。エロなしばんざい。久能さんの小説といい、こういう一昔前のノリのボーイズラブってなんだか妙に癒されます。ギラついたBLコーナーにおけるオアシスのような、そんないとしい存在です。