『月の砂漠殺人事件』上・下巻/久能千明

上下巻読了。
ボーイズラブ小説というよりも、「少女漫画なのになぜか男の子ばかり出てきますね」とつっこみを入れたくなる種類の少女漫画のノリに近い。たとえば樹なつみさんの『八雲立つ』とか、そういうノリ。
高校生の男の子四人組が親戚の経営する旅館に遊びに行き、その先で殺人事件に巻き込まれるっていうお話なんだけど、その男の子たち四人組がそれぞれ個性のはっきりした美形揃いだったり、宿泊先の家主の男の人が少女と見まごうような美青年だったり、登場人物の基本口調が「〜だぜ」だったり、設定から何から、なんだか妙に一昔前の少女漫画っぽい。
あと蓮川さんの絵柄の雰囲気が少し古風な影響もあると思う。キャラクターのまとう服にでかでか「adidas」と描いてあったり、Gジャンを着こなしていたりするところが、なんだか「花ゆめ」の少女漫画しちゃってるのである。

と言ってもそれが嫌なわけじゃなくて、むしろ少女漫画スキーの私としては好ましかった。殺人事件が軸なだけあって、BLBLしてない展開の仕方もよい。何より、受がBLBLしてない。さっきも書いたように受たんも基本口調が「〜だぜ」なので、会話だけ追っていると誰が受で誰が攻なのかまったくわからない。最近私はBLBLした小説ばかり読んでいたので、これは新鮮だった。展開がBLBLしてないだけに、ちょっとした受・攻の触れ合いにもなんだかドキドキ。二冊分焦らされると、濡れ場に到達したときの達成感は筆舌に尽くしがたいものがあった。

ただ、私はやっぱり推理小説を読み解くことがすごく苦手らしい。久能先生の文章は、すこし、状況把握がしにくいせいもあると思う(ただ単に私の読解力が足りないせいか)。「だれとだれがどこでなにをしているか」が掴みづらかったために本当に推理ができなかった。犯人については、見当がついたんだけど。あと誤植が多いのも気になった。ムービック、がんばれ。

挿絵は蓮川愛さん。蓮川さんの挿絵、好き〜〜〜。挿絵師としては、おおや和美と並んで私のなかでいま最も評価が高い漫画家さん。はるひてんてー×蓮川さんもよかったけど、久能さんとの相性もなかなかよいと思う。というか蓮川さんは割りとどの作家さんとも相性がいいと思う。ちょっとフジミの挿絵とか描いてそうな雰囲気もあるな。少なくとも後藤星さんより合ってそう……というのはただの思いつきです。このコンビでいくつか作品を出しているみたいなので、今後もチェックしてみよーかと思います。つーか「月の砂漠」がシリーズものなんだっけ?