『リアル1/2』『うつしみの手』/明治カナ子

リアル1/2 (光彩コミックス)

リアル1/2 (光彩コミックス)

うつしみの手―リアル1/2 (光彩コミックス)

うつしみの手―リアル1/2 (光彩コミックス)

明治カナ子の作品には日本のわらべうたのような雰囲気がある。「かごめかごめ」「とおりゃんせ」「ずいずいずっころばし」「はないちもんめ」などのわらべうたは子供が遊びながら歌うものでありながら、その調べも歌詞も意味深長かつ陰鬱で独特の不気味さを覚える。明治カナ子の漫画を読んでいると、夜中にわらべうたを聞いているような気分になる。可愛らしい絵柄なのに作品は底の見えない暗い穴のようで、それがわらべうたの世界観となんとなく重なる。


「リアル1/2」のシリーズを読んでいると、わらべうたの中でも「かごめかごめ」がぐるぐる回る。母親に圧迫されるあまり潔癖症になってしまった陸、その陸への想いに囚われている兄の潮。二人とも囚われているのなら囚われっぱなしで大人しくしていれば良いものを、その想いで自分をがんじがらめに縛りつけて、縛りつけたまま風船みたいにふわふわ頼りなくそのへんを流れているから妙なすれ違いが生じて、そんな二人が明治カナ子独特のほの暗い世界でひたすらセックスしているのを見ていると「かーごのなーかのとーりーはー いーついーつでーやーるー」とあの陰鬱なわらべうたを歌いたくもなる。
明治カナ子の漫画には妙な閉塞感と息苦しさがあるのだが、このシリーズはとくに閉じ込められている感が強くて、その世界観が「かごめかごめ」と似通っているような気がする。陸が夢遊病であることもありしばしば夢の中の世界が出てくるんだけど、その掴み所のない宙ぶらりんで不安定な世界には「夜明けの晩」や「うしろの正面」という矛盾した言葉の羅列がしっくりと収まると思う。読んでいて鬱になる、とまではいかないんだけど、もっとうまくやればいいのにとは思う。この二人、お互いしか見えていないくせにお互いを半分くらいしか見てないんだもん。そんなところもリアル1/2って感じ。
『リアル1/2』で始まり『うつしみの手』で終わるというのはというのはすごくうまいなあと思う。というかちゃんと現実(うつしみ)で終わってくれて良かった。あとは早く大きくなって立派な攻になるだけだ。がんばれ!


『うつしみの手』には「リアル1/2」シリーズ以外に短編がいくつか入っていたんだけど、一番最後に収録されていた麗人の作品が絵も物語もこなれていてよかった。こういうの好きよ。麗人だから絶対麗奴的なエロもなかったし。絶対麗奴ガクブル。創刊号の表紙、まだ覚えてるよ!光彩ガクブル!麗人いいじゃない。明治てんてーには麗人をおすすめする。バンブーコミックは装丁が上品な上に遊び心(カバー剥がしたところに漫画がある。これがあるだけで100円多く払っていい)もあるのでおすすめ!どう明治てんてー?(どうと言われても……)

SMなBLよりもこの人の男性向けの成人コミックが読みたいなあ。ほのぼのしてるらしいし、明治てんてーの書く女の子はかわいいと思う。でも絶版っぽい。