『あなたの下僕になりたい』/美輝妖

あなたの下僕になりたい (花音コミックス)

あなたの下僕になりたい (花音コミックス)

ジョー氏が彼女のことを「ミキヨウ」と呼ぶので私もついつい無駄に親しみを込めてミキヨウと呼んでしまう(正しくは「よしきあや」)。そしてミキヨウと口にすると続けて「自分、ミキヨウですから」と言わずにはいられない。別にミキヨウでも不器用でもないのだが。


そんなミキヨウもとい美輝妖先生の作品を読むのは今作が初めて。良く分からないところで安定してしまっている絵柄、「美輝妖」という御名の禍々しい響き、その異次元的な印象ゆえに私はミキヨウ先生の作品に軽々しく手を伸ばすことができなかった。しかし心を決めていざ読んでみると意外なことにカップリングが正しい。すごく正しい。
表題作「あなたの下僕になりたい」の攻の身長がいくらなんでもデカすぎることとか、「愛する共犯者」で現役総理大臣(受)が「私は総理大臣失格だな…国民の声より一人の男が私の心を動かしている」と独白していて「本当に失格だよ!!」と激しく突っ込まずにはいられなかったこととか、「獲物は渡さない!」の表紙が受の両乳首に釣り針を刺すというさりげなくハードSMなノリでおののいたりとか、受にいわゆる「やおい穴」があったりとか、気になるところはやや……というか結構あるのだが、カップリング自体は直野儚羅先生と比べたら神と崇めてもいいくらい正しい。特に「暴君と帝王」のレーサー×メカニックなんて超ナイスカップリングで石原理先生が書いたら素晴らしい作品になったと思う。


だが星は1個。上に挙げた気になる点も星をつけられない理由の一部なのだが、それ以上に根本的に受け入れてはならない何かがミキヨウ先生の作品にはある。ミキヨウ先生の受がたまにすごく綺麗に見えると「俺!しっかりしろ!こいつはミキヨウ先生の受だぞ!!」と、クラスメイトの男にうっかり欲情してしまったBLの攻のような葛藤をせずにはいられない。私とミキヨウ先生の間には依然としてベルリンの壁のごとく高〜〜い壁が立ちはだかっているのである。しかしそのベルリンの壁も今では崩壊した。美輝妖先生に捧げた星1つ、これは巨人の星ならぬミキヨウの星とでもいうべきもので、ミキヨウの星を掴んだ時に私はその壁を越えることが出来るのかもしれない。そのために今日も私は血の汗流し涙は拭かずにBLの道をどんと行こうと思う。