『純潔の愛人(コイビト)』/水月真兎

純潔の愛人 (花丸文庫)

純潔の愛人 (花丸文庫)

ボーイズラブの、ボーイズラブ作家による、ボーイズラブ読者のための小説。こんなにBLらしいBL小説を読んだのは久しぶり。初めの10ページでその後の展開の8割が読め、すべてのことがお約束どおりに運んでゆくのが退屈ではなくむしろ快感。たまにはこういうのもいいよね〜。文章も意外にまともで、さくさく読めた。こういう作品は受たんに女の子みたいな名前がついていることが多いので心配していたけど、この作品の受たんは明良(あきら)くんといって、なかなかに男らしくてよい。
美少年受は苦手だけど、「もう寝なさい」とか「体に気をつけなさい」とか「もっと食べなさい」とか学校の先生みたいなことばかり言ってくる攻たんは結構好き。これでもう少し、手を出したくても出せない攻たんの辛抱たまらん感が出ているともっとよかったと思うのれすが、それはただ単に私の好みなのでしょう。


ただひとつ気になるのは受たんが最初から最後までセックスのことしか考えていなかったこと。あとがきで作者が語っている作品のテーマ(?)上、仕方のないことなのかも知れないが、ラストの友人との会話までその話題でしめくくられていたのには若干戸惑った。いかにも「パイロットになる夢」がとってつけたようになってしまっているのも、受の頭にセックスしかなかったからかしらん。それもまたBL小説にありがち過ぎる現象で、「まーBLだからいっかー!」と思ってしまう。