『きみがいなけりゃ息もできない』/榎田尤利

重すぎず軽すぎずさくさく読めてしまう、まさに通勤のおともに最適な一冊。
この一冊で私の通勤時間1時間超がどれだけ短く感じられたことか。憂鬱きわまりない朝の電車タイムに、これほど有り難い一冊はない。
美術商×漫画家、幼馴染同士の世話焼きLOVE(世話焼きLOVEってよくわかんないけど)。魚住くんにも通じる雰囲気がなきにしもあらずな受たんと、久留米の5000倍くらい甲斐甲斐しいクールな攻たんのちょっともどかしい恋のお話。全体的に淡々としたリズムを持った作品で、登場人物も濃すぎず薄すぎず、ちょうどよい感じ。だから読了後もあまり読み返すべきポイントなどは思い浮かばないのだけど、最後までなるほど納得と思わせてくれる展開だったので、これはこれで不満はない。
ただ、受たんに生活力がなさすぎるので、泣く泣く★1コマイナス。これはただ単に好みの問題なのだけど、私はできないことにも一生懸命取り組もうとする不器用な受たんが好きなので、ルコちゃん先生のような甘えんぼタイプの受たんにはさほど萌えない。そういう意味で、私は榎田先生の作品の中ではキャラ文庫から出ているシリーズものの受たんが好きである。もちろんルコちゃん先生もお仕事には大変な頑張りやさんなのだが。

受の職業が漫画家なだけあって、作中にも折に触れオタクエピソードが出てくるのだが、なんかちょっぴりサブカル臭を感じ取ってしまう私の鼻がおかしいのか。オタクというよりサブカルなのである。そして相変わらず作中に出てくる女性がみな強そうだ。そして相変わらず作中に出てくるごはんがみなうまそうだ。読んでいてホットケーキが食べたくて死にそうになったのは私だけではないでしょう……。「なぜ表紙にホットケーキ?!」と思っていたけど読んでみたら合点が行った。
タイトルの『きみがいなけりゃ息もできない』は受が攻に吐いた台詞から取っているのだけど、これだけがちょっと納得行かないかも。この受、こんな台詞っぽいことはいわなさそうな感じがするんだもの。「息できない」あるいは「息ができない」なら納得なんだけど「息できない」というのは台詞的過ぎて、なんだかちょっぴり違和感がある。いや、これも個人的な感覚なのだが。


はぁ。クールで甲斐甲斐しい攻っていいなぁ。こんなムコさんいいなぁ。つーか妻攻。ところで挿絵の円陣闇丸先生、なんだか艶っぽい絵を描かれるようになりましたね。ちょっと嬉しい驚きでした。