『SEX PISTOLS』/寿たらこ

SEX PISTOLS 4 (ビーボーイコミックス)

SEX PISTOLS 4 (ビーボーイコミックス)

寿たらこ先生のセクシーかつデーハーな持ち味がいかんなく発揮されている、実に痛快な一作。
この間べつの作品の感想にもちらりと書いた通り、この方はドーブツっぽい絡みを描くのが上手いので、こういうテーマは本当に合う。絡み上手い。絵柄と作品テーマのベストマッチングにも程がある幸せな作品。といいつつも、他の作品に比べ全体にエロ度は低め。だが安心してほしい。メインカップリングの国政×ノリりんを軸に、斑種の皆さんのゲイミックスな恋愛模様が描かれる今作だが、エロ度は低めながらも、きちんと各CP「本能が理性を凌駕する瞬間」が描かれているため、ひじょーに満足度が高い仕上がりになっている。こーいうたがが外れてしまう瞬間というのはボーイズラブ一番の「恋愛的瞬間」だと思うのだが、どうだろう。直接的な絡みばっかりがエロじゃないのね〜ん。

先述の通り、本作は1組のカップリングを扱った作品ではない。国政×ノリりん以外にも、彼ら周辺のけっこういろんなカップリングの話を短編的にからませて構成している。やっぱりこの作者は短編選手だなーと思う。普段の私は、実はこういう構成が苦手で、特に主役カップリングのキャラクターにほれ込んでしまった場合、「こんな他のカップリングじゃなくてメインのふたりをてってーてきに描いてくれよおん」と思ってしまうのだが、寿たらこてんてーはさすが短編選手、各ストーリー上手にまとめてくれるので気にならない。攻・受どちらも全然好みじゃない熊樫先輩の話ですら面白く読めてしまったのは、やはり話の作り方がうまいからなのだろう。
特に私が気に入っているのが4巻におさめられたデイビッド×マクシミリアンの芸術家カップルで、このふたりの話でもう一冊読みたい!と思ってしまったほど。なんというか、非常にボーイズラブっぽい話でよい。そして寿たらこの絵柄が外人を描くのにすごく合っている。というかこの方は日本人を描いていてもどこか外人ぽい(特に攻キャラの造形)。このふたりに関してはマジで一個も不満がないのだが、なかでもふたりの愛の告白の仕方に好感を持ってしまった。同じように師の助言に従って、真摯に愛情を伝えようとしているところがよい。ふたりとも先生を尊敬しているというのが非常に伝わってきて、なんつーか、すごくよかった。正反対だけど、どこか似ているふたりというのはボーイズラブの王道だけど、この告白の仕方はその「正反対なようで似ている」がよく伝わってきてめちゃめちゃよかった。さっきから「よかった」しか言えてないな。
ところで、カップリングに不満はないけど、疑問だけは一個ある。P138のデイビッドは一体何をしているの?誰か教えて。


おいらは攻スキーなので、とにかく国政が好き。「動じない」どころか、けっこう怒りっぱなしな国政たん最高。おもろい。ハァハァ。なんだかんだいって国政×ノリりんのカップリングが一番好きだな。ノリりんは面白いし。国政がノリりんの好きなところに「面白い」というのを挙げているのが興味深い。そして、あのバイオグラフィーページに「好きな映画」の項目があるのはもっと興味深い。荒木先生と一緒〜。国政たん、『ショーシャンクの空に』が好きなんだね。なんかかわゆいな。

そんなこんなで非常に好きな作品。4巻に入って作画に若干の乱れが見受けられるが、作品全体の安定感にはなんら問題ナシ。★は5つで行きます。……あ、でも寿てんてー的には4つがいいのか。