『小説家は束縛する』/菱沢九月

なんでもいいから男同士がらぶらぶしている小説が読みたくてつい手にとってしまった一冊。
挿絵は私の好きな高久尚子さん。ただ、私はこの作家さんの文章と相性が悪く、毎回毎回「今度は大丈夫だよね、大丈夫だよね」と祈るような気持ちで読み始め、結局最後まで読んで「やっぱりだめだった……」と沈んだ気持ちで本をとじることが多いのですが、今回もそうでした。いや、続きものの二巻から手に取ること自体が間違っているのですが、昨日は帰りがけ、かなり急いでいたんです。あと10分で店が閉まる!でも今日は絶対BL本買う!買わなきゃ死ぬ!くらいの気持ちで本屋にかけこんだので、ちょうど新刊コーナーにあった表紙のイラストがいちばん好みだったこの作品を選び取ったというわけです。

何故だろう、この方の濡れ場を読んでいると、なんだか散漫な印象を受けるのです。それなりにエロい行為をしているのですが、エロく感じることができない。文体が割合硬く落ち着いているのに、しばしば受の心情的描写が思い出したように入るせいでしょうか。思いつきっぽい言葉遊びというか、比喩が結構な頻度で入るので、濡れ場に集中できないのです。
「脩司の場合は儀式に近いのだと思う。仕事に入る前の準備体操。」
とか、そういう表現を頻発されると、地の文の一部としてしっくり馴染まなくて、ぶつりぶつりと文章が切れてしまう感じがする。そうすると私の思考も途切れて、気がつくと文字を目で追いながらも別のことを考えてしまって、濡れ場もストーリーも頭に入ってこないのです。



駄菓子菓子、この方の描く退廃的な雰囲気自体は好きで、カップリングとしても受・攻、なかなか「正しい!承認!」な感じのキャラクターつくりがされているので★は2.8。