『ランブル・ラッシュ』/藭室晶・高緒拾

ランブル・ラッシュ (JUNEコミックス ピアスシリーズ)

ランブル・ラッシュ (JUNEコミックス ピアスシリーズ)

表紙の絵がいいのに、書影が出ないのが残念。
怒涛のエロ系ラインナップの中に、「潮騒」というタイトルの静かな作品がひとつ。官能モード全開の作品に埋もれていると、こういう作品は妙に真摯に感じられるから不思議。ともあれ、こういうパターンは嫌いじゃない。帯に西炯子さんも書いているけれど、ツボを心得た官能漫画であることは間違いない。ただのボーイズラブ系エロとは一線を画す何かがある。たとえばそれは描き手のこだわりが如実に感じられる筋肉質な肉体の描写であったり、妙に深みを帯びたオヤジの視線の描写であったり、カラー口絵の下着を引き摺り下ろされる受青年の恥じらい方であったり、そういうものである。
とにかくこのカラー口絵が素晴らしいので、「カラー口絵に600円!」な作品だった。ラストに収録されているSMモノの話もいい。縄の描写に作者のパッションを感じた。官能の渦に巻かれて堕ちていくのかと思いきや、ほのぼのと終わったのも意外性があってよかった。実はSMというのはボーイズラブの世界では余りお目にかからない(ミーが避けているのかも知れないけど)と思うのだけど、ゲイコミックの中では割合一般的なような気がする(これも私がまともなゲイコミックは田亀源五郎しか読んだことがないからそう思うのかもしれないけど)。
この作者さんはお二人名前が掲載されているんだけど、どういう担当の割り振り方なんだろう。どちらかというと、攻の方がよく描けている(えらそう)。受青年の方が櫻井しゅしゅしゅさんと岩清水うきゃさんを足して、G-men風味にしたような顔つきで、ところどころ作画が安定しないので気になる。

全体にミーの好みではないんだけど、こだわりの感じられる作風にほのかなリスペクト。今後も機会があれば手にとってみたい作家さん。というわけで星3つ。