『ドント・クライ・マイ・ベイビー』/西田東

バンブーの西田東先生にはずれなし…!!

表題作の終わり方がすばらしすぎる。男の不器用さを全力で肯定し、全力で愛でる。それが私にとってのボーイズラブだとしみじみ思った。いや「全力で」というとなんだか大げさかも。西田先生の描き方は、あくまでさりげなく自然体なのです。そこが素敵なのです。それにつけても西田先生の描く不器用な男性が好きすぎる。西田先生は、社会的にそれなりに成功していているがゆえにゲイである自分を認められず、かといって世間に迎合して生きることもできず、切なく葛藤しているサラリーマンを描くことが多いように思います。表題作に出てくるそんなサラリーマン、藤田のかわいさは異常。攻の小野が愛している音楽が4畳半フォークっていうのもなんかいい。そういう設定にあざとさを感じない。西田先生はほんとうに素敵だ。この終わり方で、このタイトル…。しみじみいいなぁ。

あとは「女房の恋」が心に残りました。こういう上司を描かせると、西田先生の右に出る者はいないね!!時にはつまらない親父ギャグもいう、決して理想の男じゃない、だけど仕事について語る男らしい横顔はなんだかまぶしくてうっかりときめいたりさせられてしまう。誰でも好きにならずにいられない…ああなんて素敵なんだ。あとこの作品は濡れ場がなんかよかったです。余裕ない感じで。西田先生は上手いな…。
歴史モノ「KING」も印象的。わざと主線を太く描いていて、絵柄の面でもちょっと冒険なさっているのかなと思いました。絵柄は白いのに、チャチくならないのが不思議。

ほんと、どれもよかった。あとがきも秀逸。西田先生作品は短編が特に好きです。割とこの方、キャラクターのバリエーションが少ない気がするんですよね。だから、作品として印象に残るものが多くて、「キャラ」がものすごく立っているものって、実は少ないと思うんです、あくまで私の印象では。「西田キャラといえば」と言われると、最初に出てくるのは『願い叶えたまえ』の絹川×深見さんだったりするんだけど、あれはキャラがすごく立ってて、たぶん花音の編集の方針とか強いんじゃないかしら…などと思ったりしました。
それはそれで素敵だし、『願い叶えたまえ』大好きなんですけど、短編の、名前も平凡で「とりあえずリーマン」って大雑把にくくれちゃうくらいのキャラが主人公のほうが、西田節っぽいなぁと思うのでした。あんまりキャラが立ちすぎてしまうと、「この二人の続きを読ませてよ!」って暴動を起こしたくなるので、西田先生の短編はそのさじ加減が絶妙だと思うのです。


●追記 3/4 14:03
絹川×深見さんのカップリングの表記を、最初、逆に書いてました…!なんというミス。失礼いたしました。