『上海金魚』/かわい有美子

上海金魚 (CROSS NOVELS)

上海金魚 (CROSS NOVELS)

しっとりしていて、なかなかいいBLでした。
生粋のゲイの受たんが妻子もちの攻と上海に旅行に出かけ、そこで攻のうそ、裏切りが発覚。「夫婦仲が冷え切ってるなんてうそ、妻とは別れるなんてうそ。ただの愛人扱いなら最初からそう言ってほしかった」そんな風に、受たんは攻を全身で拒絶します。そのとき、ちょうど上海に居合わせた攻の知り合い・滝乃が、受たんの旅行の残りの日程のあいだだけ面倒をみることになって…。
というお話。そう、この後から出てきた滝乃さん(私の中であだ名はタッキー)がすごいいい人なんですよ。ボーイズラブの攻のくせに、大人の男の包容力があるというのかなあ>< デキる営業マンってこんな人ね、って感じで。そんな素敵な人なもんで、受たんも妻子もちの第1の攻の裏切りなんて、だんだんどうでもよくなっていっちゃうワケ。この受たんはとても身持ちが堅くて、まじめで、地方の田舎まちの登記所で働いている公務員で、普段は絵に描いたようなモサモサのモサ男なんだけど、メガネをはずすとアラビックリ、なかなかキレイな男で、にじみ出るような色香があるんです。そこにノン気のはずのタッキーも興味をひかれちゃうワケ。
二人はさいしょっから、お互いビビビっときていたんですよね。
それで最後の夜に上海のホテルで結ばれてしまうわけですが、このへんの流れが、結構生々しくて色っぽかったです。あんまり直截的な表現はないんだけど…なんだろう、“旅先で盛り上がる一瞬の花火感”(ってなんだろう)がよく出てた。で、受たんはまじめな子だし、てっきりおずおず系なのかと思いきや、濡れ場では本領を遺憾なく発揮。攻が物怖じするほどの色気爆発で、大変盛り上がっておられました。よかったですね。

翌朝、攻が目覚めると「ありがとうございました」の書置きが…。
その後の華麗な再会ふくめ、「なんというベタな」と突っ込まずにはいられない展開だけど、私、お約束大好きなので、むしろよかったです。再会してからのシーンが短くて、ちょっと物足りなかったかな?

でもしっとりBLで、よかったです。『透過性〜』を読んで、「たぶんタッキーはいい攻だろう」とアタリをつけていた私のやおい的勘の鋭さを自画自賛しておきます。でもツボではない…ツボではないんだよね…。柔らかすぎるというか…。かっこいいとは思うんだけど><

それにしてもかわい先生の文体って独特だな…。特に会話文における改行のおおさが特徴的だと思う。あと同じ意味の文章が見開きで繰り返されているところがあって、編集さんのかたにはちゃんとチェックしていただきたいなと思いました(すみませんえらそうで…)。