『目を閉じればいつかの海』/崎谷はるひ

「ブルーサウンドシリーズ」一冊目。

この作品のドラマCDを収録したあとの感想で、受役の声優さんが「泣きましたよー!ストーリーが切なくて!」みたいなことをおっしゃっていたらしい(おべんちゃらなのかどうかはわからない。ただ、CDではけっこういい演技をしているらしい)。そのネタはどっかのウェブサイトで読んだんだけど、私はそのとき初めて「えっこの話って切ないお話だったんだ!?」と気づいた。というか未だにこの話のどこが切ないのかよく理解できていない。確かに若い二人が別れなきゃいけなかった現実は悲しいけれど、それだってこの受が自分で決断したことだし。その後に再会して寄りを戻して、「攻には奥さんがいるのに、こんな…!あぁん!」みたいな感じでウジウジアンアン悩んでたのだって、結局最初に確認作業を怠ったからだし。全部自業自得でないの!?それって切ないか!?
と思ってしまい、まさにセーテンのヘキレキだった。

でもこの小説自体は気に入ってる。淫乱スイッチのある受が新しかったから。ウジウジアンアンが面白かった。いつまでも女々しくウジウジ悩んでる受って苦手なんだけど、この作品の受は大丈夫。やっぱ崎谷先生はこういうなんでもない思い違い勘違いを描くのが巧い。私には切ないと思えないけど。あとは、セレブ攻が素敵でした。この内容でおおや和美が挿絵をつけるというのも驚き。おおや先生はもっとリリカル路線の挿絵しか描かないかと…。

ところで、はるひてんてーは「〜れば、」という言い回しを使いすぎだと思う。昔読んだリーフの作品で、1見開きに3回以上出てきて、思わずカウントしてしまった。こういう言い回しは、一冊のなかに3回〜5回くらいで妥当なのではないか? 

昔ヤリ●ンだったという、恋愛アドバイザー化する女子、真雪はちょっと苦手だった。これが受と攻の愛を積極的に後押しするやおいっ娘なキャラクターだったならまだ共感できるのに…。BL作家のキャリアへの考え方とかって、女性キャラによく出る気がする。