『さよならを言う気はない』/英田サキ

さよならを言う気はない (SHYノベルス162)

さよならを言う気はない (SHYノベルス162)

シャイノベルズって新書のなかでは一番安心して買えるレーベルかも知れない。これかビーボーイかリンクスロマンスあたりにはあまり外れがない。逆に外れしかないのがわかっててたまに手をのばしたくなるのがリーフ。で、案外まともな作品があったりして驚くのもまた一興。

話がそれました。最近私は英田サキさんを頑張って読んでいます。「シャイで英田サキなら、まぁ外れはなかろう」ということで本書を手にとってみました。うん。確かに外れではなかったです。カバーのデザインも落ち着いていてなかなかだし、北畠あけ乃さんの挿絵もきれいにまとまっている印象です。ただ、帯にある人物紹介の文の位置は逆にするべきだと思う。帯を見て、はじめ私はメガネが陣内かと誤解しました。カップリングは元刑事の私立探偵(ヘタレ攻)×美形のヤクザ(俺様受)で、キャラクター的にもおいしいとこもっていってる感じです。


だけれど、この小説はあまりにもインスパイア元が明白だったもので、私のなかではイマイチ消化不良感が残りました。天海と陣内、それぞれのキャラクターは魅力的だとは思うのですが、もう一歩英田先生にしか出せない味っちゅーか、そういうモンがほしかったです。強いて言うならば、このカップリングに必然性が感じられなかったんですな。

私はカップリング間には何をおいても「必然性」を求めます。「なぜこの受には、この攻でなければならんのか?」「なぜこの攻には、この受でなければならんのか?」。よいBL作品を読んだあとには、たいていそのはっきりとした答えが得られます。ただし、前者の答えを得るのはさほど困難でなくとも、後者についてはなかなか納得のゆく答えをくれる作品には出会えません。BLには、不遇の受を救い出してくれるスーパーマン的攻の登場する話が多いからです。攻が受に手を出すのはただの酔狂、みたいな。
だから攻の受に対する愛情の描写って、実はとても難しいのかも。みんな身体で表現しすぎなんだもん。