『キビしいのである。』/山田靫(現山田ユギ)

キビしいのである。 (ジュネコミックス)

キビしいのである。 (ジュネコミックス)

こんなにユギたん先生が好きなのに今までこれを手に取ったことがなかったなんて自分で自分が信じられない!と驚愕した一冊。まさに「山田ユギの初期衝動ォォォォ!!!!」がめいっぱいつまった素晴らしい内容となっている。表題作の『キビしいのである。』は隣人の受たんに惚れてしまったノンケ青年18歳の葛藤を描いた作品。ストレートな性格が好ましい主人公のかわゆさもさることながら、大人しそうに見えてキレると暴力的な実に山田ユギらしいキャラクターの受たんもとっても魅力的。ラストの「ベロ入れりゃよかった」という主人公の台詞がよし。この後悔の仕方が年下攻!山田ユギは台詞のセンスがいい。


この頃の山田ユギはまだ今ほど絵が洗練されていなくて、たとえていうならば背腸を取り除く前のエビのような独特の泥臭さがあると思うのだが、それもまた味があってよい。何より、生活感を殺さない作風に合っている。この人は少女漫画家だったら月マが似合うだろう。初めて作品を読んだころに「月マっぽい絵だなぁ」と思ったのを覚えている。「きら、谷川史子山田ユギ」と執筆陣が並んでいても、あんまり驚かないぞ。なーんて思っていたのだが、あれよあれよという間にめちゃくちゃ売れっ子の作家さんになってしまった。何はともあれ、これだけうまい作家さんがボーイズラブ界にいて、そして自分と同じようにやおいを愛しているという事実が嬉しい(私もルパン×銭形だから。てかこれってイバラなのか?全然王道じゃんと思うのだが)。これからも山田ユギてんてーにはボーイズラブ界のきらめく一等星でいてほしい。そんな願いを込めて、ミーにとって初めての星5つを勝手に進呈させていただく。