『純潔の愛人(コイビト)』/水月真兎

純潔の愛人 (花丸文庫)

純潔の愛人 (花丸文庫)

漢字にまったく読み方の違うふりがなをカタカナであてるようなセンスの人とは感覚が合わないだろうと常日頃から思っているにも関わらず、どうしても何か読みたくて買ってしまった一冊。意外とまともな文章で安心したが、「なまじな男」という言葉に妙な違和感を感じた。別に誤用じゃないと思うんだけど、会話文で突然「なまじな男」とか言われてもね〜。それとこれはボーイズラブ小説によくあるのだが、「〜だけど。」で終わる文章が地の文に紛れていると微妙にイラつく。こういう感想文や日記でなら気にならないのだが、小説にあると「『だけど』なんなんじゃ〜〜〜い!!!」とちゃぶ台をひっくり返したくなる。
借金のカタに美少年が売られていく話というのは『お金がないっ』以降生まれたBL王道なのだろうかとぼんやり思っていたら、あとがきに「借金のかたに買われた純真無垢な少年のお話」は「BLの王道的テーマ」と書かれていた。『お金がないっ』以降に生まれたのかどうかは知らないが、私の知っているBLの王道は「強姦されて憎んでいたはずの攻をいつの間にか好きになってしまう受」というフジミ的展開なのだが、この王道はもう古いのだろうか。この二つの王道の比較について語りたいのだが、長くなるのでまたの機会に。


受がウジウジしすぎだった点と、濡れ場になると途端に16歳から6歳へと幼児退行する(「×××××」呼びは萎える…)点を除けば、それなりに面白く読めた。王道というのはどんな人が書いても「それなりに面白く読める」から王道なのだろう。花丸文庫の挿絵の数もなかなか適量だと思う。