『フェイク・ダイヤ』/久能千明

フェイク・ダイヤ

フェイク・ダイヤ

わたし、久能先生好きなんです。去年、新刊が全然出なくてすごい悲しかったくらいには好きなんです。なのに、イマイチだった。これは超イマイチだった。なぜかまったく心に響かなかった。芸能ものだったせいか、読んでいる最中、むしろ某春抱き方面に意識が飛んだ。特にオーディションのシーンは、香藤が「秋月さん…っ!」と叫んでるシーンが頭に浮かんでしょうがなかった。は〜。冬の蝉のオーディションの回、面白かったな〜。



という具合に春抱きの感想を書きたくなるくらいこの小説はイマイチだったんですよね。たぶん、定価がバカ高いからその分、無駄に評価が厳しくなっているとは思う。けど、前シリーズの刑事ものならともかく、今回は別にハードカバーの似合う内容じゃないし尚更不満満載でござる。芸能モノだし、別にルビー文庫で十分だろ。580円だろ。改行多すぎだし、特に前半受たんの台詞ぜんぶに「!」が入っていてうるさいのなんの…。ほんとに、うめずかずおキャラかと思った。

本当に、なんでこんなにイマイチだったんだろう…。不思議なくらいイマイチだった。受キャラの焦燥、鬱屈、細かく書き込まれている割には上滑りな感じ。顔がキレイなだけで万年優等生の新人俳優が、男に身を投げ出して複雑な役柄をつかむ? 意味がわからない。本気で意味がわからない。

それでも受キャラが攻に惚れる理由はよくわかるんだけど(彼は受に対していろんな気づきを与えてくれたので)、攻が受に惚れた理由がよくわからない。素材として惚れてるのかしらん。だったら長続きしないだろ、そんな恋愛。と思ってしまう。でもまぁ、攻キャラの気持ちがガツンとこない、というのは久能作品にありがちなことなんですけどね。『グレイ・ゾーン』も『青の軌跡』もそんな感じ。だから私は『ターニング・ポイント』が割合、好きです。攻の気持ちがちゃんと伝わってくるので。

ルビー文庫なら★3つだったかもしれません。私自身、根本的に芸能モノがニガテという自覚もある。それでも、パワー不足の否めない1冊だったように思います。


志水ゆき先生の挿絵は、やはし、BL的な華がピカイチですね。攻キャラがかっこよくてはあはあ。