『番人』/国枝彩香

番人 (ビーボーイコミックス)

番人 (ビーボーイコミックス)

ひさしぶりのリブレ出版からの新刊です。前作『風の行方』(ビブロス刊)が2004年10月……。もう3年も前になるんですねぇ…。絵は相変わらず綺麗で表現力豊かだし、話もおもしろいし…これほど作風に安定感のある人って珍しいと思う!!正直「萌え」のために読んでいるのかは謎ですが、新刊が出れば買ってしまうし、買ったことを後悔した本は一冊もない。何かの折りに読み返しては、こんな人がボーイズラブを描いてくれる事実に感謝してる。


今回はシリアスめの作品を集めた短編集です。国枝さんはコメディもシリアスも巧いので、どんと来い太郎です。しかし、表題作の『番人』を自分が理解しきれているのかはなぞです。私は読解力がないのでありますぞ。まぁこれは読み込むよりとにかく感じろ!お耽美を感じたまへ!ってノリの作品ですよね、たぶん。

『Show Me Heaven』のカップリングがいちばん国枝キャラらしいなと思いました。攻のビジュアルが比較的かっこうよいめなことを除けば、非常に国枝スタンダードなキャラたちだと思うのです。前にも書きましたが、国枝さんの攻の好みは変わっていると思います。なんか、攻キャラがゼンゼンかっこうよくないんです。ちょっと情けなかったり、ズルかったり、不幸だったり、無神経だったり、顔が長かったり…とにもかくにも、あんなに正統派で端正な絵柄なのに、攻のキャラ造形がイマイチ、一般の王道路線とズレていると思うのです。
同様に、受キャラに関してもどこか首を傾げたくなる雰囲気があります。特に『未来の記憶』『風の行方』シリーズの受キャラはその傾向が顕著でした。顔はカワイイのに私服がハデでKARIYAZAKIテイストだったり…。なんていうかこう、萌えづらいのです。萌えハードル、無駄に高いのです。

続く『窓の裏側』も、三角関係、死、レイプ、自殺未遂と重いキーワードが並ぶ一作です。いや、いま思い出しながら書いていて、自分でもびっくりしました。そりゃ暗いわ…。部室のシーンにすばらしく緊迫感があって流石だわ〜と思って読みました。結構、背景とか力を抜いた感じの線なのに、緩急のつけかたが巧いのかしら。

ともあれ、久しぶりのリブレからの新刊、堪能しました!おしまい。
…で終わらせたいところなのですが、そうは問屋がおろしません!みなさん、2005年の不細工特集を思い出してください。なんかひとつ、変な作品が紛れてませんでしたか?他の作家がこぞって「受」を不細工に描いているところ、「攻」を超弩級に不細工に描いている作家さんがいませんでしたか?そしてその作品は国枝彩香という漫画家によって描かれた『めぐり逢い…COSMO』ではありませんでしたか?
この作品は、やおい界の不細工モノの中で、伝説的作品になるでしょう。なぜなら、自ら攻キャラをあそこまで不細工に描く人は、今後そうそう現れないと思うからです。普通、不細工特集の場合、逆転の発想で受を不細工に描くと思うのですが…。BLに似たノリのハーレクインで想像してみてください。地球上のどこに、不細工な王子様にさらわれたいヒロインがいることでしょう。やはり国枝さんのセンスは一筋縄ではいかないですな。今後も末永く読みたい漫画家さんです。そして気が向いたらまた不細工攻を描いてほしいな…と思わなくもなかったりする。