『お金がないっ』/篠崎一夜

お金がないっ (リンクスロマンス)

お金がないっ (リンクスロマンス)

調子に乗って小説にもチャレンジングしてみた。本当だ。漫画版は結構、ストーリーを変えてるんですね。小説を読んで改めて思ったけど、香坂透のコミカライズはまじで優秀だと思う。このシリーズにチャレンジするなら、まずは漫画から入ってみるのがおすすめ。漫画を楽しめたら、小説も楽しめると思う。篠崎先生、思っていたよりも文章がまともだった。あと性描写に気合が感じられる点もポイントが高い。

このシリーズの優れている点は、なんといっても攻のキャラクターでしょう。いや、「あんたがその攻を好きなだけでしょう」という突っ込みはなしの方向で。いや、あのね。普通、こーいう破天荒な展開をするBLの攻って、もっとヒドイんですよ。本作に出てくる狩納北(かのう そむく)もじゅうぶんヒドイんだけど、ヒドさが意外と温い。生暖かい。なんか、相手のことが好きで好きで、ついいじめちゃう小学生みたいな、そーいう微笑ましさがあるのですよ。たとえ無理やり受にローターを突っ込んだまま食事に連れ出しても。結構、まじな感じで「キスしていいか」とか「好きだぜ」とか言ってしまうような男なんですよ、攻は。ちゃんと言葉にして相手に伝えてあげるって、とても大切なことだと思います*1。だから、受たんがヒドイことされてても、あんまり「ひゃーヒ・サ・ンー!」って感じがしないのね。そこが私がこのシリーズを気に入ってるトコです。一般的なBLって、攻は体だけで受に対して想いを伝えようとする。好き放題やりまくって、「何で俺の気持ちが伝わらないんだ!」って、アンタそりゃわかんねーよ、みたいな突っ込みを禁じえない作品が多いんですな。受は受でそんな攻に対して「攻はどうせ僕の体だけが目的なんだ…(ウジウジ)」みたいな感じで流されるばかり。で、いい加減我慢ならなくなって攻のもとから逃げた途端に、受の体を狙う第三の当て馬男登場。受が犯されかかった途端に攻がスーパーマンよろしく登場、「俺の受に何するだァーーッ!」バチコーン(殴る音)。「受!俺はお前が好きだ…!今まで言えなくてすまなかったっ!」「攻さんっ……!僕も好、き…っあっ……!」そのあとは皆さんお分かりのとおり、例のものを延々20〜30ページ繰り広げて、おちまい。セックスでアンアン盛り上がっておちまいですよ。お前らそんなくだらん関係、3年後には絶対続いてねぇゾと超突っ込みたくなるんですけど、結構、BLのステレオタイプ的展開ってこんな感じだと思います(もしかして私、くだらんBLの読みすぎなんでしょうか? でもこういう展開って割と多いと思うんですよう…)。まーこの話にも今言ったみたいな特徴がまったく見られないわけじゃないんですが。

受たんに関しては、漫画より小説のほうが若干気が強い感じですね。これはこれでかわいいんじゃないでしょうか。ごめんなさい、受に対してそんなに語ることがない(笑)。そんな私は攻スキー。BL読むときは圧倒的に攻に共感しながら読み進めるタイプです。赦してください。

それにしてもこの本の誤植は気になるなぁ。句点が抜け落ちている致命的なミスが一つあったけど、なぜ新装版でしかも三刷りまでいっていて誤植を修正しないんじゃろう。不思議。

*1:なんかそーいうつまんないすれ違いを描いたBLが多すぎるため、最近ますますそう思うようになった。まぁ関係の始まりが始まりなので、攻の想いがどこまでこの受に伝わっているのかは謎ですけどね