『夜が蘇る』/英田サキ

夜が蘇る (プラチナ文庫)

夜が蘇る (プラチナ文庫)

小説家の「英田サキ」と挿絵の「山田ユギ」の名前が似すぎだったので手にとってみた一冊。いや、似すぎだろこの二人の名前! やっぱり英田サキ先生文章うまいなぁ。カップリングも外れがないし、安定感がありがたい作家さんです。今作はラテン系ヤクザ×元刑事の未亡人探偵が繰り広げるアダルティーなLOVE物語でした。プラチナ文庫な上に主役二人が三十路男なので、アダルト度が高かったです。しかもかなり後半になって「実は年下攻めだった」という事実が発覚する嬉し&驚きのオプション付き。これには年下攻めに目がない小生、大興奮。思わずページを繰る手が汗ばんでしまったほどである。陽気な攻×堅物の受、という組み合わせは非常に好みなので、この二人の会話は楽しく読めました。
だがしかし、やはりわたしは英田先生の感性にきれいに寄り添うことができないらしい。確かに外れのない作家さんだが、当たりがきたこともない。今回もそうだった。カップリングとしてこれほどまでに正しいのにナゼッ…? 自分で自分がわからないッ! でも悲しいかな萌えないの…。
受と攻のキャラに他作品とデジャブるところが多かったせいもあると思うんだけど。思うに、死んでしまった受の恋人のキャラクターの掘り下げ方が足りないのではないだろうか。なぜ刑事としての立場を危うくしてまで、この受は羽生というヤクザに抱かれていたのか? その動機を裏付ける、具体的かつ説得的なエピソードがほしい(続編でフォローされているのだろうか)。そのあたりのことがイマイチ納得いかないから、久我が「死んだ攻ごと受け入れる」と発言しても、攻の愛に酔うことができない。あと受に順応性がありすぎる。もう少し恥じらいを…とは言いません。「別に小娘じゃあるまいし」みたいなあっさりした割り切り方ができるのも、この受の魅力なのでしょう。でもいつの間にか攻の部下を下の名前で呼び捨てにしていたり、依頼人の甥のことも呼び捨てにしたり、「そ、そういうキャラだっけ?」と戸惑ってしまうことがしばしばある。もう少し受の性格に細やかさがあると、より一層攻キャラとの対比が際立って、魅力が出ると思うのだが。あと、タイトルにも使われている「夜」ということばが、物語全体のキーワードにもなっているんですが、これが、なんか今ひとつしっくりきていないというか、ぶっちゃけて言ってしまうと少しオサムい印象がある。しかも、ラストの会話まで「夜」で締めくくられていたのには、若干戸惑った。小生の感性がおかしいのでしょうか…。百歩譲って、攻がサムいのは許そう。というかむしろサムいくらいの攻が好きだ。駄菓子菓子、オサムい受は苦手なのだ、わたしは。受でサムい想いはしたくないのだ。
そういえば、未亡人受ってやおい(ここではパロディーの意)だとわたしの好きなタイプそのままかも。A×B前提のC×Bが好きなんです。わかりやすく説明するために具体例を出しますと、某錬金術師で言うと、ヒ●ーロイ前提のハボ●イみたいなものです。思うに、わたしはひとつでも多くのものを攻に「受け入れてほしい」と思っているのかも知れない。死んだ恋人ごと、その受を受け入れてあげる。そういう攻のやさしさにシビれる憧れる。
めぞん一刻』とか、萌えたことありませんか? とりあえず満足ですが、すぐ様「続編読まなきゃ!!」という気持ちにはならないなあ。